咳葬
白い空間。
よくある表現だが、
そこにずっといると
他に表現が思い浮かばなくなる。
白い。
ただ、白い。
病室とはそんなものだろう。
血飛沫のひとつでもあれば
想像に時間を委ねられるだろうに。
私は肺の病だ。
呼吸の度に、咳をする度に、
痰を吐く度に、自分を客観的に見る度に、
病の匂いがする。
なにもすることがなく
することができず
思案に耽るばかり。
たとえば
咳をするから痰が出るのか
痰があるから咳をするのか。
人はこの肺の匂いを
病の気と知って私を避けるのか
単に匂いが厭で私を避けるのか。
咳をするときの
内耳が引っ張らるような錯覚に、
口から凄絶な吐息をはいて
風圧で眼球や内臓もろとも
吐き出す様を想像したり。
私はこの病を知るために生まれたのか
そのつらさを記すために生まれたのか
それともやはり意味などないのか。
病床につく前より
幾許か感傷的な心持ちになっている。
理解していても
他人はおろか自分ですら
歯止めとはなりえなかった。
さらに残念なことには
思考のほとんどは疑念だった。
誰に向けたものか
なぜ浮かぶのか
それすらわからない疑問。
答えを求めていることも
違うと感じられ、
まるで神に赦しを得るような
人間の病に陥ったときの
定型の儀式にも思える。
そう感じたとき
私は初めて神を信じた。
そして神が
私の内耳を引っ張って
五臓六腑に脳と眼と皮膚、
それらをすべて天に召し、
ベッドに骸骨だけが残る、
そんな様を浮かべながら
私は逝こうと願ったのだった。
よくある表現だが、
そこにずっといると
他に表現が思い浮かばなくなる。
白い。
ただ、白い。
病室とはそんなものだろう。
血飛沫のひとつでもあれば
想像に時間を委ねられるだろうに。
私は肺の病だ。
呼吸の度に、咳をする度に、
痰を吐く度に、自分を客観的に見る度に、
病の匂いがする。
なにもすることがなく
することができず
思案に耽るばかり。
たとえば
咳をするから痰が出るのか
痰があるから咳をするのか。
人はこの肺の匂いを
病の気と知って私を避けるのか
単に匂いが厭で私を避けるのか。
咳をするときの
内耳が引っ張らるような錯覚に、
口から凄絶な吐息をはいて
風圧で眼球や内臓もろとも
吐き出す様を想像したり。
私はこの病を知るために生まれたのか
そのつらさを記すために生まれたのか
それともやはり意味などないのか。
病床につく前より
幾許か感傷的な心持ちになっている。
理解していても
他人はおろか自分ですら
歯止めとはなりえなかった。
さらに残念なことには
思考のほとんどは疑念だった。
誰に向けたものか
なぜ浮かぶのか
それすらわからない疑問。
答えを求めていることも
違うと感じられ、
まるで神に赦しを得るような
人間の病に陥ったときの
定型の儀式にも思える。
そう感じたとき
私は初めて神を信じた。
そして神が
私の内耳を引っ張って
五臓六腑に脳と眼と皮膚、
それらをすべて天に召し、
ベッドに骸骨だけが残る、
そんな様を浮かべながら
私は逝こうと願ったのだった。
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