覗き返される
「適当にくつろいでてー」
彼女の声にオレは「うん」と返し、
ベッドの脇に腰を下ろした。
案外ウマくいった。
堅そうに見えても、やっぱ女はカルいもんだ。
独り暮らしで初対面の男を家に上げるなんざ、
カルい以外のなにもんでもない。
いや、独り暮らしだからこそ、か。
ニヤけながら、出されたジュースを手に取る。
グラスはほどよく冷たく、ストローが刺さっている。
一口のんで上機嫌に、なにげなくストローを覗き込んだ。
「わっ!!」
驚いてストローを投げ出す。
ストローの向こう側から覗き返されてた!?
「どうかしたー?」
彼女の声に、なにげない素振りで「いいや」と応える。
見間違い……? 寝ぼけてたのか……?
そのとき、ドアをノックする音がした。
「ごめーん。今ちょっとあたしムリだから、
代わりに出てー」
面倒だなと軽く舌打ちしながら、
覗き口に目を近づける。
「ひっ!!」
来訪者は、覗き口の向こうからオレを覗き込んでいた。
「もー、どーかしたのー?」
オレは黙ったままなにも言わなかった。
ドアの向こうでは、いつのまにか気配がなくなっていた。
恐々ながら覗いてみると、誰もいない。
「ごめん、用事おもいだした。帰る」
慌てて逃げ出す。
この部屋が1階であることを踏まえて
オレは窓から外へ出る。
女がなにか言うが、構うもんか。
さっきの来訪者と鉢合わせしないよう
周りに気を使いながら走る。
乗ってきた車に乗り込み、エンジンをかける。
心配とは逆に、よどみなく発車する。
これで安心だ。
真っ暗闇のなかを走る。
家までの道は2つ、
大通りだが遠回りになる道と
近道だが薄暗いライトだけが点いているトンネル。
とにかく早く家に帰りたくて、
オレはトンネルのほうを選んだ。
暗い道はより濃く重くなり、
どこか張り詰めた緊張感を保っている。
右折するコーナーにさしかかる。
ここを曲がればトンネルだ。
オレはアクセルを踏んだ。
トンネルの入り口が見えてくる。
青黒い空気が背筋を凍らせた。
トンネルの出口からは
その出口を埋めるような大きさの
どす黒い目がオレを見ていた。
「わああああっ!!!」
トンネルに入る寸前で急ブレーキをかける。
スピンしながら出口に背を向ける形で
車は止まった。
頭をしたたか打ちつけ
暖かい液体が額を伝う。
血だろうか。
車はトンネルのなかで止まり、
エンジンはうんともすんとも言わない。
諦めながら自嘲気味に
背中をせもたれに預けた。
オレは見てしまった。
目の前のトンネルの入り口から
あの黒い目が覗き込んでいるのを。
トンネルは目に閉じ込められ、
オレは声にならない悲鳴を叫んだ。
彼女の声にオレは「うん」と返し、
ベッドの脇に腰を下ろした。
案外ウマくいった。
堅そうに見えても、やっぱ女はカルいもんだ。
独り暮らしで初対面の男を家に上げるなんざ、
カルい以外のなにもんでもない。
いや、独り暮らしだからこそ、か。
ニヤけながら、出されたジュースを手に取る。
グラスはほどよく冷たく、ストローが刺さっている。
一口のんで上機嫌に、なにげなくストローを覗き込んだ。
「わっ!!」
驚いてストローを投げ出す。
ストローの向こう側から覗き返されてた!?
「どうかしたー?」
彼女の声に、なにげない素振りで「いいや」と応える。
見間違い……? 寝ぼけてたのか……?
そのとき、ドアをノックする音がした。
「ごめーん。今ちょっとあたしムリだから、
代わりに出てー」
面倒だなと軽く舌打ちしながら、
覗き口に目を近づける。
「ひっ!!」
来訪者は、覗き口の向こうからオレを覗き込んでいた。
「もー、どーかしたのー?」
オレは黙ったままなにも言わなかった。
ドアの向こうでは、いつのまにか気配がなくなっていた。
恐々ながら覗いてみると、誰もいない。
「ごめん、用事おもいだした。帰る」
慌てて逃げ出す。
この部屋が1階であることを踏まえて
オレは窓から外へ出る。
女がなにか言うが、構うもんか。
さっきの来訪者と鉢合わせしないよう
周りに気を使いながら走る。
乗ってきた車に乗り込み、エンジンをかける。
心配とは逆に、よどみなく発車する。
これで安心だ。
真っ暗闇のなかを走る。
家までの道は2つ、
大通りだが遠回りになる道と
近道だが薄暗いライトだけが点いているトンネル。
とにかく早く家に帰りたくて、
オレはトンネルのほうを選んだ。
暗い道はより濃く重くなり、
どこか張り詰めた緊張感を保っている。
右折するコーナーにさしかかる。
ここを曲がればトンネルだ。
オレはアクセルを踏んだ。
トンネルの入り口が見えてくる。
青黒い空気が背筋を凍らせた。
トンネルの出口からは
その出口を埋めるような大きさの
どす黒い目がオレを見ていた。
「わああああっ!!!」
トンネルに入る寸前で急ブレーキをかける。
スピンしながら出口に背を向ける形で
車は止まった。
頭をしたたか打ちつけ
暖かい液体が額を伝う。
血だろうか。
車はトンネルのなかで止まり、
エンジンはうんともすんとも言わない。
諦めながら自嘲気味に
背中をせもたれに預けた。
オレは見てしまった。
目の前のトンネルの入り口から
あの黒い目が覗き込んでいるのを。
トンネルは目に閉じ込められ、
オレは声にならない悲鳴を叫んだ。
コメント
コメントの投稿



