同等ではない。
僕は生きている。
生きて、このなだらかな坂を上っている。
人は生きるなかで、なにかを得てなにかを失う。
得るものと失うものは、必ずしも等しくない。同等ではない。
先日、卒業式を目の前に告白をした。
中学2年のときに同じクラスになり、それ以来ずっと
――高校3年までの5年間――好きだった。
「ごめんね、カレシいるから」
意外なほどにあっけなかった。
僕は臆面もせず「片想いの素敵な時間をありがとう」といえるほど
自分の思いを美化することはできなかった。
そして、受験は失敗した。
受けた3校のうち、公立の大学2校は不合格。
念のために保険をかけていた私立にのみ合格した。
母さんには泣かれた。
財政面で苦渋を強いられなければならないと、
夕間暮れどきに電気もつけずに切々と語られた。
父は呑んで、暴れた。
母も妹も僕も、見境なく殴った。
僕がいつものように妹を身を挺してかばうのを、
母さんは蹴られながら感情のない目で見ていた。
僕には妹の早紀さえいれば、それでよかった。
美少女とはいえなかったが、笑うと垂れる目が愛らしかった。
いつも困ると僕の名を呼んでくれるのが嬉しかった。
坂はゆっくりと勾配をなくし、その先にある病院が見えてくる。
今さらながら、「なぜ」と気持ちが暗く沈む。
人生万事塞翁が馬、というが
僕の未来はいつもたやすく予想できた。
そしてその通りに、現実となっていった。
よく己の不甲斐ないのを呪った。
弱さを、意気地のないのを悔いた。恥じた。
けれど、なぜか僕の思いなんてまったく関係ないように
物事は過ぎ行き、暗澹たる結果だけが残った。
振り返ると町並みが見える。
わずかながら高みに位置するため、少し遠くを見渡せた。
どうせ予想できる結果が待ち受けているなら、
せめて僕の手で終わらせようと思う。
涙を枯らせて、殴られながら死んだ目を向ける母。
それが本人の意思なのか、酒のせいなのかもわからなくなった父。
そしていつもの通学路で車にはねられ意識を閉ざしたままの早紀。
僕がなにかするとき、予想の先には諦めがあった。
今度もそれは変わらない。
けれど予想はできなかった。自分でも、本当になにを望んでいるのかわからない。
無に帰すことが本意なのか、それを止められることを待っているのか。
ただ、僕には決意はあった。ことをなすだけの決意は。
僕は生きている。
人は生きるなかで、なにかを得てなにかを失う。
得るものと失うものは、必ずしも等しくない。同等ではない。
生きて、このなだらかな坂を上っている。
人は生きるなかで、なにかを得てなにかを失う。
得るものと失うものは、必ずしも等しくない。同等ではない。
先日、卒業式を目の前に告白をした。
中学2年のときに同じクラスになり、それ以来ずっと
――高校3年までの5年間――好きだった。
「ごめんね、カレシいるから」
意外なほどにあっけなかった。
僕は臆面もせず「片想いの素敵な時間をありがとう」といえるほど
自分の思いを美化することはできなかった。
そして、受験は失敗した。
受けた3校のうち、公立の大学2校は不合格。
念のために保険をかけていた私立にのみ合格した。
母さんには泣かれた。
財政面で苦渋を強いられなければならないと、
夕間暮れどきに電気もつけずに切々と語られた。
父は呑んで、暴れた。
母も妹も僕も、見境なく殴った。
僕がいつものように妹を身を挺してかばうのを、
母さんは蹴られながら感情のない目で見ていた。
僕には妹の早紀さえいれば、それでよかった。
美少女とはいえなかったが、笑うと垂れる目が愛らしかった。
いつも困ると僕の名を呼んでくれるのが嬉しかった。
坂はゆっくりと勾配をなくし、その先にある病院が見えてくる。
今さらながら、「なぜ」と気持ちが暗く沈む。
人生万事塞翁が馬、というが
僕の未来はいつもたやすく予想できた。
そしてその通りに、現実となっていった。
よく己の不甲斐ないのを呪った。
弱さを、意気地のないのを悔いた。恥じた。
けれど、なぜか僕の思いなんてまったく関係ないように
物事は過ぎ行き、暗澹たる結果だけが残った。
振り返ると町並みが見える。
わずかながら高みに位置するため、少し遠くを見渡せた。
どうせ予想できる結果が待ち受けているなら、
せめて僕の手で終わらせようと思う。
涙を枯らせて、殴られながら死んだ目を向ける母。
それが本人の意思なのか、酒のせいなのかもわからなくなった父。
そしていつもの通学路で車にはねられ意識を閉ざしたままの早紀。
僕がなにかするとき、予想の先には諦めがあった。
今度もそれは変わらない。
けれど予想はできなかった。自分でも、本当になにを望んでいるのかわからない。
無に帰すことが本意なのか、それを止められることを待っているのか。
ただ、僕には決意はあった。ことをなすだけの決意は。
僕は生きている。
人は生きるなかで、なにかを得てなにかを失う。
得るものと失うものは、必ずしも等しくない。同等ではない。
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